コラム | YOKOと過ごすフランス時間 | 私の好きなパリ

「いつでも一人になれる2人で旅行するのが理想ね」まるで独り言のようにさらりとそう言った友人。留学経験なしで3か国語を操る旅好きなその幼友達は、社会に出てキャリアを積みはじめていました。私は当時90%専業主婦。日本語以外何も役に立つレベルの言葉を持ち合わせていないくせに、ヨーロッパに憧れ、語学堪能な数人の友人にくっついては旅行を楽しんでいました。いつまでたっても一人になれない私は、少しずつ友人たちのお荷物になっていたようです。

それから数年後。。。私とフランスの関係が深まる出来事がありました。それは阪神淡路大震災です。あの頃、日々の暮らしを勇気づけてくれたのがフランス語学習でした。

 

さて、次回のコラムのテーマをどうしようかな?とぼんやり考えていたら、たまたまつけっぱなしになっていたBSの画面からパリの屋根の画像が目に入ってきました。

今に始まった事ではないですが、日本のテレビ番組にはフランス特集がなんて多いことでしょうか!それだけ興味を持っている人が多いということですね。フランス好きには嬉しい限りです。この日の番組は、パリのいくつかの屋上で繰り広げられている知られざる世界をたくさん紹介していて、1時間テレビの前から動けずに見てしまいました。

中でもグラン・パレの屋上でミツバチ🐝の巣箱を置いてハチミツ作りをしている養蜂家の方のお話にはなるほどと感心しました。

 

田舎では農薬の多用でミツバチが生息できなくなり、ハチミツが採れなくなったけど、パリ市ではいち早く緑化活動がさかんになり、大気汚染は否めないですがマロニエ、菩提樹そしてベランダや公園の花々など無農薬な植物が沢山あり、自然豊かな環境でミツバチにとっては田舎よりずっと住みやすいのだとか。そういえパリでは美しい公園には必ず花壇があり、お役所仕事の域を超えた素晴らしいセンスの花壇は美しい花々で彩られています。


 
 

別の番組ではフランスの経済学者ジャック・アタリ氏が未来について知性溢れる言葉を連発していて、あまりにも深く心に響きまたもやテレビの前から動けなくなっていました。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、このようなフランス関係の番組を見ながら次回はパリについてお話ししたいという気持ちになりました。

 

私がパリを最初に訪れたのは、ヨーロッパ数か国をギューッと詰め込んだ2週間くらいのパックツアーでロンドンからスタートしてパリから帰国するという当時のお決まりコースを選んだ新婚旅行でした。

最後の滞在都市パリに到着して先ず私を刺激したのは匂いでした。パリの匂い。。。

そういえば、そのあと出会うフランス人たちが一様に「日本は匂いのない国でなにか物足りない」と言っていたことが思い出されます。パリの香りについてはまた別の機会にゆっくりと。。。

 


ヘミングウェイは「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」という言葉を残していますが、私の人生にもやはりパリがまとわりついてくれています。

毎回パリに到着して、宿泊先が左岸の場合はアレクサンドル3世橋を渡ってもらうようにしています。1900年パリ万博を記念して建築されたこの華麗な装飾の橋は、グラン・パレとプティ・パレの間を通り正面にアンヴァリッド、左側遠くにはシテ島、ノートルダム大聖堂が見えてくる立地です。

  
 

皆様良くご存知の今のパリは、第二帝政期にナポレオン3世の構想に沿って、当時のセーヌ県知事、ジョルジュ・オスマンが実施したパリ改造計画で美しく整備されたことは有名です。その後1889年、フランス革命100周年の年に行われた第4回パリ万博の最大のモニュメントとして建てられたのがエッフェル塔です。そして1900年に開催された万博を機に建てられたのがグラン・パレ、プティ・パレ、そしてアレクサンドル3世橋です。運が良ければ薄紫色と茜色のグラデーションで空が染まってゆく夕暮れのパリに迎えてもらえます。


パリでは散歩中に街中で教会のコンサートなどの貼り紙を見つけることがよくあります。パリの発祥の地と言われているシテ島にひっそりと佇むサント・シャペル。ここはルイ9世が聖遺物を奉納するために造らせた礼拝堂です。ここで年間を通してクラシックのコンサートが開催されています。万華鏡の中にいるような空間で流れる時間はパリの歴史が私たちに与えてくれる賜物だと思います。昼間はパリ最古のステンドグラスが織り成す光の芸術を堪能して、夜は全く違う表情を体験しに再び同じ場所へ。。。ステンドグラスの彩りも変化してそこに音の芸術が加わるのです。これ以上の贅沢があるでしょうか!

 
 
 

このようにパリではあまりにも贅沢な体験ができるからでしょうか。お腹があまりすかなくて。。。年齢かもしれませんね。

美しい街並み、芸術品、骨董品などを鑑賞しているとそれだけでお腹がいっぱいになってしまうのです。

 

 
 

そんなわけで友人とのランチやディナーやお家にご招待を受けた時以外、一人で過ごす日の食生活はランチかアフタヌーンティーを中心に後はとにかくシンプルです。

お仕事で関わるラデュレのオフィスが7区ですので何かと都合が良いこの辺りに滞在することが多く、最近のお気に入りお一人様ランチはキャビアで有名なペトロシアンです。残念ながらキャビア三昧はできません!これは自分のお財布では贅沢過ぎですので。。。そこでお店の方にスモークサーモンやニシンの酢漬けなど好きなものを少しずつお皿に入れていただきます。場所柄、お買い物に来る男性(キャビアやサーモンを買いに来るのは男性が断然多いです)は皆、素敵なパリジャン。びっくりするような金額をさらりとカードで支払う様子などからまたまたその人の生活を勝手に想像してニンマリしてしまいます。

 

 

私はパリを歩く時、ガイドブックは持ち歩きません。日本で準備したメモとミシェランの地図だけを持って、後は自分の感覚に任せることにしています。お天気次第でその日に最初に行く場所を決めて一日をスタート。時間に縛られずゆっくりと最初の訪問を終えたら、そこで地図を広げて近くに何があるかな?と次の行動を決める。。。毎日そのような流れで過ごします。

 

次回はいつこの町を歩けるのかな?と思いながら最後のこの写真を眺めています。

「すべてのことにはその時がある」という意味の店名を持つパリのアンティークショップの看板ですが、昔から私は人生の岐路に立たされた時に自分で決めようとせずに流れに任せて答えを待つよう努めています。そしてその時に言い聞かせる大事な言葉と同じ店名を見つけて喜んでシャッターを切った思い出の一枚です。

皆様のかけがえないことにその時が必ず訪れますように。

 

En attendant avec impatience de vous revoir.

YOKO