コラム | YOKOと過ごすフランス時間 | 夢のクチュリエ、クリスチャン・ディオール (2)

Bonjour à tous !

連休が終わりましたね。フランスでは11日から段階的にデコンフィネ(隔離を解く)されてゆくようです。

7回目のコラムでパリの屋根の上で繰り広げられている番組を見ていてテレビの前から離れられなかったとお伝えいたしましたが、先日の日曜日にも同じようなことがありました。この朝、たまたまテレビをつけたら日曜美術館が始まるところでシャンティイ城のコンデ美術館所蔵で門外不出の世界一美しい本と称される「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」が紹介されていました。15世紀に描かれた貴重な彩色本の有名なカレンダーの部分を細部まで美しく映し出していました。コラムでも紹介したサント・シャペルの15世紀の様子も描かれていて、中世のフランス人の日々の暮らしを知ることができる見事な番組でした。カリグラフィーをなさっている方ならよくご存じの本ですね。

再放送は今週末10日の午後8時からあるようです。もしまだご覧になられていなければきっとご覧くださいね。

 

 

余談からスタートしてしまいましたが、今回はクリスチャン・ディオールの展覧会をご紹介するとお伝えしていました。この展覧会、メゾンの70周年をお祝いして、かつて王宮の一部だったパリの装飾芸術博物館で20177月から20181月まで開催されて大成功を収めたものです。もちろん私も例年の夏の滞在のマストな行事としてリストアップしていて鑑賞しました。パリの展覧会で1時間以上並んだのは初めてでしたが、モードがフランス文化の重要な位置づけを成していると再確認する圧巻の内容でした。

本日ご紹介写真の順序と文章は関連がありませんのでご了承ください。

 

私がクリスチャン・ディオールについて話すときは現在のブランドDIORというよりむしろムッシュ ディオールが創り上げた10年間の儚いけれど永遠のCristian Diorになります。もちろん、今回の回顧展でもしっかりと紹介されていたメゾンを受け継いだ歴代のデザイナーの創作なくしてメゾンは成り立ちません。個人的にはジャンフランコ・フェレの時代も大好きです。今回の展覧会でもそれぞれの作品が美しい絵巻のように展示されていました。

 

クリスチャン・ディオールというブランドを最初に好きになったのは、イメージカラーの薄いピンクとグレーからでした。薄いグレーのビロード素材の椅子、備品のピンクのリボンなどお店が醸し出す雰囲気に魅せられたように記憶しています。そしてずいぶん後になってからこの色のインスピレーションはクリスチャン・ディオールが幼少期を過ごした瀟洒なヴィラだったことを知りこの地まで赴きました。芸術と自然を愛しいつもエレガントに装う母マドレーヌと過ごしたグランヴィルのお屋敷、その砂糖菓子のような時間。これがディオールの創造の源だと思っています。この頃からデッサンも大きな喜びの時間だったようです。

1946年にモンテーニュ街30番地に初めての自分のサロンをオープンするにあたり、内装もまた過ぎ去りし日に母が飾ったパリのアパルトマンや子供の頃の幸福な時間を再現したかったのです。淡いグレーと白を基調としたルイ16世スタイルがベースでメダイヨンの中に刻まれたロゴもまたマリー=アントワネットが愛した様式です。

ディオールはかつて画廊の経営をしていたほど芸術に造詣が深かったのでクチュリエとして成功した後の自宅はタピスリー、絵画、家具などが歴史を語るような趣味で飾られていたそうです。私はフランスの歴史や装飾美術、特に18世紀、19世紀に深い興味がありますので、このような部分でクリスチャン・ディオールに惹かれているのだと思います。そして私にとってクリスチャン・ディオールほど品格を感じるデザイナーがいないからです。幼少期をどう過ごすかがその人のその後の人生にどれほど影響を与えるかということをあらためて感じます。

 

実は今回、皆様に是非ご覧になって頂きたいのはこの展覧会の裏側、準備の様子を収めたドキュメンタリーフィルムなのです。ひとつの展覧会が開催されるまでには数年の準備期間が必要です。ここではフランスの文化芸術のレベルの高さや、女性が強く美しく働く姿など今のフランス社会も垣間見ることができます。フランス語学習中の方は聞き取りのレッスンビデオとしても大活躍するでしょう。

心はノルマンディーへ、パリへ

素敵な旅をお楽しみください。

次回は花々を愛したムッシュへ敬意もこめてフランスの花をテーマにお話しいたしますね。

Beau voyage !

 

YOKO

 


 

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日本語の字幕は以下の画像の所をクリックすると出てきます。
ぜひ、ご堪能くださいね。