Bonjour à toutes et à tous !
前回のコラムの画像から私が今日ご紹介する薔薇園を予想できた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この場所に必ず行くように、とアドヴァイスを下さったのはシャアリの薔薇のイベント会場で出会ったマダムでした。
「あなたバラがお好きなのね。私も毎年欠かさずここに来るのよ。まあ、日本からわざわざ!モリアンヴァルの薔薇園をご存知?必ず行かなきゃ」そんな会話の最中ですでに私の頭はくるくると回ってこの後の日程をどうやって調整しようかしら?と考えていました。
もちろんこのモリアンヴァルの薔薇園に必ず行くために。
少し調べるとモリアンヴァルというのは地名であり、この薔薇園がある修道院の名前でもあることがわかりました。そして、薔薇園はRoserie de David Austinという名前でした。日本でもバラを栽培されている方はこの名前をご存じではないでしょうか。
イングリッシュ・ローズの生みの親でイギリスのバラ育種家、デヴィッド・オースティン (1926-2018) がフランスに開いた薔薇園だったのです。
私はバラが大好きです。でも、自分で栽培したことは一度もない園芸の分野ではドがつく素人です。ですから私が薔薇の世界で偉業を成したというデヴィッド・オースティンについて詳しく紹介することは控えますが一つだけ。。。彼は大好きなオールドローズにはない豊富な色と四季咲き性という特徴があるハイブリッドティーを掛け合わせることでオールドローズの香りを兼ね備え、モダンローズの利点を持ったバラ、「イングリッシュ・ローズ」を生み出した人です。
この薔薇園はシャルル・ド・ゴール空港からも近く、パリから車で50分程モリアンヴァル修道院の敷地の中にあります。
http://www.abbayedemorienval.com/
さて、訪問を予定していた日の前日から大雨が続いていました。薔薇園に電話をかけると状態が悪いから閉園していて今日はオープンできないだろう、というお返事。私はこれ以上日程を変更することができない事情もあり「とにかく向かいます!」と強引に伝えて強行作戦をとりました。本当に嫌になります。美しいバラに出逢いに行くのに時間に追われて優雅もなにもあったものではありません。
とにかく無事に到着。この頃には雨は上がってうっすらと青空がのぞき始めていました。
ドキドキしながら事務所らしき建物のドアをのぞいたところ。。。カギがかかっていて誰もいません。私はもちろん諦めずに電話をかけて入り口まで来ていることを伝えました。
少し待つと長靴とエプロン姿の女性が笑顔でやって来ました。この笑顔を見た時に「どうにかなる」と確信し先ずは丁寧にご挨拶。マダムによるとこの薔薇園の責任者であるご主人が「今日は誰も入れない!」と言っていたけれど、日本からだという事情を説明して特別に許可を取ったということでした。ご主人は自分が手掛けるバラを子供のように愛おしく思い、また誇りに思っているので大雨でクタクタにつかれているバラを休ませてあげたいという思いと、万全ではない状態で披露したくないという気持ちだったのですね。私は感謝の気持ちとともに「静かに歩いて優しく声をかけます」と告げてこの花園へ足を踏み入れました。
そこは言葉で表現することができない世界でした。前述の理由で貸し切りという贅沢な中で雨上がりの空気も影響していたのでしょう。むせかえるような芳香に包まれ、自分がまるで小動物にでもなったかのように花から花へぴょんぴょんと移動してしまいました!静かに静かにと言い聞かせても興奮が止みません。花びらには雨粒がかすかな光をうけて柔らかく輝いていました。
私は香りのない花にあまり惹かれないので、花を見るとまず鼻を花にくっつけてしまいます。この日はお約束通り優しく接することが前提でしたが、ほとんどの花は顔をほんの少し近づけるだけでそれぞれ違う香りを漂わせていました。ここは人の手で作られた庭園でありながらまるで自然にすっぽり包まれているように過ごせる幸福の園でした。
皆様にはビデオをとおして少しでもこの雰囲気を楽しいでいただければ幸いです。
フランスでは花々の見せ方にもセンスが感じられます。フランス人と話をしていると「エステティック」という言葉が使われます。日本だとエステティックサロンのイメージが強いと思いますが、フランスでは美的なものや美意識の話題の時によく使われる言葉です。フランス人は日常の暮らしの中でも高い美意識を持っていますので、普段の会話の中で美しい、美しくないという判断基準が頻繁に出てきます。彼らが持つ「美しい」の基準もまた興味深い分野ですが今日はこのあたりで。。。
モリアンヴァルの薔薇園も今年は閉園が決まったようです。いつの日かこの花園の薔薇の声を聞きにお出かけくださいね。