Bonjour à toutes et à tous !
6月も終わりに近づいています。
唐突ですが6月29日は日本でも有名なフランスの作家、「星の王子様」の著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの誕生日です。1900年生まれですので今年生誕120年ですね。
今日は香りとフランスの最後の回ですが、実は最初の回の最後に星の王子様の有名な言葉「大切なことは目に見えない」という部分のフランス語を残していました。
この本で書かれていることに香りは関係していないのですが、以前、NHKの香りをテーマにした特集番組の中で、当時のゲラン家4代目の調香師の方が「どれほど美しい人も暗闇ではその美しさを見ることはできない。香りだけがその人を表現できる」と言っていたことが印象に残っていて、サン=テグジュペリのフレーズと重なり、目に見えないものにこそ真の美が宿るのだと自分の中でこの2つをつなげていたのでした。
ゲラン家の3代目の調香師ジャック・ゲランとサン=テグジュペリが友人だったことから、サン=テグジュペリの代表作「夜間飛行」(ヴォル・ド・ニュイ)がゲランの香水のネーミングに影響を与え命名されていることも興味深いです。
私がコーディネーターを務めているラデュレにも実は香りに関係する商品が数多くあります。
そもそもお菓子屋さんがお菓子以外の品を作るようになったのには理由があります。
世界中の顧客からのご要望で、このブランドの思い出の品を自分の国へ持ち帰りたいということが始まりだったと聞いています。看板商品のマカロンは日持ちがしませんので。。。
最初にできた素敵な品がスミレの香りのルームフレグランスでした。まだ日本にラデュレができるずっと以前のお話。世界中の顧客のためのギフトラインは旅をテーマに作られてゆきました。ホテルでくつろぐときに欠かせないお気に入りの香りからはじまり、今では「旅」というテーマを超えて芳しいコレクションが発表され続けています。中でもフランス人が大好きなアイテム、お香の企画が持ち上がった時には、淡路島の香司の方々にご相談して上質な香りのお香ができ上りました。お香のボックスと私のお気に入りのラデュレのアーカイブパッケージの一部をお披露目いたします。
香りは太古の昔から神々に捧げられてきました。古代エジプト時代には神と人とを結ぶ神聖な役割でした。世俗の世界でも誕生、結婚などの祝い事、死者の弔いなど人生の節目の儀式に香りは欠かせないものでした。ローマ帝国では、使用が規制されるほどに香料が乱用され、
イスラムの社会では薫香の習慣から生活全体が香りで包まれていました。その後、オリエントの文化がヨーロッパに伝わり、香りが生活に取り入れられるようになりました。
フランスに香水文化をもたらしたのはフィレンツエから後の国王アンリ2世と結婚するためにやって来たカトリーヌ・ド・メディシスです。そして、強い香りを好んだルイ14世、香りの宮廷と呼ばれるほどにふんだんに香水を使ったルイ15世の時代、自然な柔らかい花の香りを好んだルイ16世妃マリー=アントワネットへと香りは王侯貴族に欠かせないアイテムとして愛用されます。
19世紀になると市民階級も香水を使うようになり、合成香料が作られ大量生産もスタートして近代香水の時代に入ってゆきます。
今では当たり前になっているモードと香水を最初に結びつけたのはポール・ポワレです。
ポワレは自分のドレスの仕上げには香水が欠かせないと考え、クチュリエの中で初めて香水のブランド「レ・パルファン・ド・ロジーヌ」を設立し香水の販売を手がけました。この後、1920年代にはシャネル、ランヴァンなどファッションメゾンによる香水が次々と発表されることになります。
そして、このように香りと深いかかわりを持つ国、フランスにはいくつかの香水博物館が存在しています。中でもパリ滞在で気軽に立ち寄れるのがフラゴナール香水博物館です。
オペラ座から徒歩2分くらいの場所でパリに行ったらどなたも必ず立ち寄るエリアにあります。https://musee-parfum-paris.fragonard.com/en/
建物の入口を入るとすぐに受付があり、英語かフランス語のどちらかガイドツアーを申し込むことになります。ここはフリーでの見学は行っておらず、希望者は全員ガイド付きで説明を受けながら見学します。フラゴナールが代々所蔵する文化財や歴史上のエピソードなどの紹介、原料について、生産や抽出方法、調合テクニックなど、商品としてできあがっていくまでの過程を分かりやすく説明してくれます。
余談ですが、この美術館のある場所が風情ある静かな通りでちょっと素敵なのです。美術館のすぐ前にあるカジュアルなイタリアンレストランもお気に入りです。お店のスタッフも気さくで予約なしでも空いていれば気持ちよく席に案内してくれます。もちろんテラス席をお勧めします。
南仏まで足をのばす時間がおありの方はグラースの国際香水博物館を訪れてはいかがでしょうか。
https://www.museesdegrasse.com/en/presentation-museum
パリに行くときには美術館の企画展を必ず事前にチェックするというお話は以前にいたしましたが、思いがけない珠玉の展覧会に出会えることが多々あります。
マレにあるユダヤ芸術歴史美術館で行われていた『ヘレナ・ルビンスタイン 美の冒険』展もまさにその出会いでした。
働く女性が少ない時代にほぼ無一文から自らの名前を冠したブランドを設立。優秀な女性実業家として美容に人生を捧げ93歳で亡くなるまでの、偉大なる女性の人生をこの展覧会で辿ることができました。美容界での功績だけではなく、彼女と芸術との関係にもスポットを当てていてとても見応えがありました。
フランスの美術館には香水瓶以外にもお化粧にまつわる信じられないくらいに繊細な品々が展示されています。ご自分のお気に入りをテーマに、パリの美術館巡りをするのも素敵なアイデアですね。
最後にご紹介したいのはモンマルトルの麓にある古い香水瓶を扱うお店なのですが、以前はあったはずのウエブサイトが消えてしまっています。お店をクローズしていなければよいのですが。。。可能になればとにかく飛んで行って確認してこようと思います。
https://www.montmartre-addict.com/article/belle-de-jour/
香りは記憶と一体になり私たちを深いところで結びつけてくれます。目に見えないからこそ、相手の内面にすぅーっと入り込んでゆきます。香りの旅の続きは馥郁なフランスで。。。